2023年10月1日スタートのインボイス制度とは

2022.09.29

インボイス制度とは?メリット・デメリットを解説

2023年(令和5年)10月1日から新たに導入される「インボイス制度」。導入後は請求書の発行や保存に関する規定が変更になります。

この制度が導入されることで、企業や個人事業主、フリーランスにとっては少なからず影響が生じます。

では、このインボイス制度とは具体的にどのような制度なのか、導入される目的やメリット、デメリットについて解説いたします。

インボイス制度とは

インボイス制度とは、請求書の発行や保存に関わる新制度で、正式名称は「適格請求書等保存方式」です。2023年(令和5年)10月1日より導入されます。

従来の「区分記載請求書保存方式」では、取引相手の発行した請求書等があれば「仕入税額控除」を受けられました。

しかし、制度導入後は「適格請求書(インボイス)」があるもののみ控除対象となるため、控除を受けるには消費税を仕入税額控除として明記した適格請求書を受領、保管する必要があります。

消費税を納める必要のある企業や個人事業主に影響があるほか、課税事業者である取引先からの請求に対し、適格請求書を交付する必要も出てくることでしょう。

インボイス制度の導入目的

インボイス制度が導入される目的は、取引の仕入れに係る消費税額と消費税率の正確な把握です。

2019年(令和元年)10月、消費税増税に伴い軽減税率が導入され、仕入税額の中に消費税8%と10%のものが混在し、商品の仕入れや販売時の税額計算が複雑化しました。

そこで、商品ごとの価格と税率が記載された書類を保存することで計算ミスや不正を防止するために詳細な記録として適格請求書を残す、インボイス制度が設けられました。

インボイス制度のメリット

では、まずインボイス制度のメリットといえる部分についてご紹介いたします。

【新たな取引先が増える可能性が高まる】


インボイス制度導入後は、適格請求書がないと仕入にかかる消費税の免除制度「仕入税額控除」を受けることができません。

適格請求書の発行には、適格請求書発行事業者として登録している必要があるため、取引先が発行事業者ではない場合、乗り換えるケースも増えてくると予想されます。

そのため、今後は取引先の選定に「適格請求書発行事業者であること」も大きなポイントとなってくることでしょう。

なお、適格請求書発行事業者の登録には、年間の売上が1,000万円超の課税事業者であることが条件です。

【電子インボイスを導入しやすくなる】


インボイス制度に対応できるようにワークフローや会計システムなどを整備しておけば、電子インボイスの導入もしやすくなります。

■電子インボイスとは


電子インボイスとは、電子データ形式の適格請求書のことです。紙のように請求書の印刷、封入や郵送といった手間とコスト、保管スペースが必要ないなどのメリットがあります。

なお、電子インボイスに対応するには、電子帳簿保存法に則ったデータの保存、管理が求められるため、法律面の理解も深めておく必要があります。

【消費税をより正確に計算できる】


消費税増税後、従来の請求書では消費税率が10%と8%で混在していたため、仕入税額控除や確定申告の際には各税率に分けて消費税を算出し直す手間が必要でした。

しかし、適格請求書では商品ごとの消費税率と消費税率ごとの消費税額が記載されるため、消費税額が正確に分かりやすく、計算ミスを防ぐことができます。

インボイス制度のデメリット

つづいて、インボイス制度のデメリットとなってしまう部分についてもご紹介いたします。

【経理業務の手間が増える】


インボイス制度が導入されると、従来とは異なる記載項目の請求書を作成する必要があり、また仕入税額控除を受ける際の要件が変更になります。

また、適格請求書の交付と写しの保存、受領した適格請求書の保存、適格返還請求書の交付や、一般の請求書との振り分けなど、経理業務の煩雑化が懸念されます。

【仕入税額の控除が減少する可能性がある】


インボイス制度導入後は、適格請求書発行事業者ではない免税事業者と取引をおこなうと、適格請求書が発行できないため、仕入税額控除が受けられなくなります。

そのため、同じ取引先から同一金額の商品を購入しても、制度導入後は消費税額の処理方法が変わるため、仕入税額の控除が減少し、納付税額が増加してしまいます。

取引先が適格請求書発行事業者になれば問題ありませんが、それには消費税の納税義務が発生する課税事業者となる必要があるため、容易なことではありません。

制度導入後の6年間は、経過措置として免税事業者との取引も仕入税額を一定の割合だけ控除可能ですが、税額を考えると今後は適格請求書発行事業者との取引に切り替えるケースも増えてくることでしょう。

インボイス制度を導入するための対応

インボイス制度の導入にあたり、どのような対応が必要になるのかについてご紹介いたします。

【請求書のフォーマット変更】


インボイス制度で使われる適格請求書は、消費税を仕入税額控除として明記し、次の要件を満たす請求書等を交付・保存する必要があります。

・適格請求書発行事業者の、氏名または名称および登録番号
・取引年月日
・取引内容(軽減税率の対象品目である場合はその旨)
・税率ごとに合計した対価の額および適用税率
・消費税額
・書類の交付を受ける事業者の氏名または名称

現行のフォーマットを一部修正する程度で対応できそうか、新たに作り直す必要があるか、事前に確認されることをおすすめします。

【経理業務の見直し】


仕入税額控除を受けるには、作成・保存する請求書のフォーマットが変更になるため、経理業務の煩雑化が予想されます。

制度導入後も滞りなく業務をおこなうために、適格請求書受領後の処理の流れや保存方法などのワークフローを構築し、変化に対応できる体制を整えることも重要です。

場合によっては、インボイス制度に対応できるシステムを導入することで、適格請求書の作成や保存を一括でおこなえるようにするという選択肢もあります。

【適格請求書発行事業者の登録】


適格請求書を発行するには、適格請求書発行事業者として登録する必要があります。

適格請求書発行事業者となるには、「e-Tax」「郵送」「書類の持参」のいずれかの方法で、所轄の税務署宛てに登録申請書を提出します。

申請の受付は開始しており、2023年(令和5年)10月1日の制度開始に間に合わせたい場合は、2023年3月までに申請を済ませておいてください。

まとめ

インボイス制度の導入により、これまでと異なる書式の請求書を作成することとなり、企業としても制度の変更に対応していく必要がありますが、メリットといえる部分もあります。

制度開始前から社内研修やセミナーなどで事前に理解を深め、適格請求書発行事業者の申請やシステム導入など、必要な環境を整えておくことが望ましいでしょう。

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